わたしにとっての「ものづくり」
はじめに
「ものづくり」は学生のころからずっと大切にしているテーマだ。描いたりつくったりすることが好きだし、職人やアーティストなどつくる人にも憧れてきた。
「人はつくらなければ生きていけない」。とある技術教育の研究者が言っていたのを聞いて、こんなことを考えた。獣のような体毛も牙も爪もなく、植物のような光合成の機能もない、私たち人間は、つくらなくては生きていけない。衣食住どれも、自然そのままの環境や素材ではなく、何かしら手を加え心地よいものにして取り入れる。つまり、つくることで得るのだ。きっと、つくることは人が人たりうる根源的な力なのだ、と。もちろん、今の時代、自らつくらずとも消費者として暮らしていくこともできるけれど、つくることには本能的なよろこびがある、そんな気がする。
仕事としてのものづくりを始めてからは、じっくり考えこむことは少なくなったけれど、売り場やイベント催事などで一途なつくり手や異才を放つ作家などさまざまな人と出会い、改めて「ものづくり」の力を感じてきた。手を加える中で生まれるモノへの、驚きや満足感。つくり手によって感じ方や度合いは違うのだろうけど、何かしらプラスの力が働いているように思う。
そして2020年、わたしは障害児の母になった。今まで知らなかった福祉や社会制度、障害のある人たちの現状や将来について真剣に学び、考える立場となった。その中で福祉施設でつくられるたくさんの「丁寧で可愛いらしいもの」との出逢い。それは自分がこれまで続けてきた「ものづくり」とこれからの自分の生き方を繋げたように思えた。制度の中で私にできることは限られているかもしれない。けれど、伝えることはできる。伝えることで、誰かの何かになるかもしれない。伝え続けることで、私と娘の何かになるかもしれない。
これは私の新しい可能性と、発見を探す「ものづくり」の場所です。